【知財及び発明工作授業】NPO法人 マナビノキ様
【日時】2021年10月17日(日) 9:30~15:30
【会場】NPO法人 マナビノキ
【対象】16名(小1:1名、小2:4名、小3:2名、小4:4名、小5:2名、小6:1名、高校生ボランティア2名)
【担当講師】知財創造教育支援委員会 谷島隆士、原田潤子
■授業の概要
NPO法人マナビノキが、1,2か月に1度、1日を通して行っている「探究・創造ワークショップ」の授業を、
「キャリアde探究 発明家・弁理士ってどんな仕事?~発明家になってみよう~」のタイトルで行った。時間割は下記の通り。
(1)講義「発明家」(60分)、(2)発明工作ペーパーブリッジ(個人で設計図)(30分)、(3)昼食、
(4)発明工作ペーパーブリッジ(グループで工作)(80分)、(5)グループ発表(20分)、(6)講義「弁理士」(50分)
(1)講義「発明家」:
まず、谷島委員が、企業の「発明家」として講義をした。有名な発明として、エジソンが発明した電球・蓄音機、身近な発明として、
事前に配った「ヒット商品はこうして生まれた!」の発明を紹介し、更にはジッパー、絆創膏、シャープペンシルなどの発明が
どんな時に生まれたかを紹介した。続いて、「発明の手順」を説明し、事前課題であった
「みんなが気づいた困っていること」について子ども達に発言してもらった。
その後、花王の研究員の発明品であるクイックルワイパー、ビオレお花・肉球型の泡スタンプハンドソープ等を紹介し、
実物を子供達に触れてもらいながら、発明で「生活にどんな変化が生まれるか」を考えてもらった。
更に、発明は、学校で教わる「知識」と、その後自分で身につける「知恵」を使ってできるということを理解してもらった。学校で習う磁石の「知識」を使いながら、実際に磁石につくものつかないもの、磁石の力を弱めるものなど体験してもらい、「知恵」を使いながら、発明が生まれる感覚をつかんでもらった。
最後に磁石を使った小学生の発明品ができるまでの動画を見せた。
「発明家」になりたいと思う子供も多く、次々に発言したり、興味を持って聞き入ったりしていた。
(2)発明工作 個人で設計図:
続けて、発明工作「ペーパーブリッジ」で、使える材料やルールの説明をし、
まずは設計図・デザイン・名前やマークを一人一人紙に書いてもらった。
(3)昼食:
昼食前の手洗いは、講義で紹介したビオレお花スタンプハンドソープを使ってもらった。
マナビノキの方が、今回のテーマにちなんで、
明治時代の日本人の発明である「ハヤシライス」を手作りして下さり、皆で美味しくいただいた。
(4)発明工作 グループ作業:
4人ずつの4班に分かれて、ペーパーブリッジを実際に工作した。
橋を架ける場所は、1m以上あればどこでもよいように、子ども達に任せたので、場所探しも楽しんでいるようだった。
低学年と高学年がいるグループでは、高学年の子が橋本体の構造や作成をしている中、
低学年の子が、クレヨン、シール、クラフトパンチ、マスキングテープなどを使ってデザインに力を入れ、
ちょうど役割分担ができ、全員が参加できる形となっていた。ミニカーなどを試験的に走らせ、失敗すると
「失敗してもあきらめないのが発明家だ!」と言いながら、楽しそうにがんばっていた。
(5)グループ発表:
それぞれの橋の工夫した点、デザイン、ネーミング等紹介してもらった後、ピンポン玉、ガムテープ、各自持参したミニカー、一番重くて大きいドッチボールまで順番に転がしてもらった。
ドッチボールを転がせた橋が2つもあって、大いに盛り上がった。
(6)講義「弁理士」:
「発明したものはその後いったいどうなるのか?」ということを、原田委員が弁理士の仕事を通して説明した。
午前中に紹介した発明品や、皆が発明工作でした発明が簡単にマネされてしまったらどうするか?という問いかけから始まった。
弁理士は「発明家を助ける仕事」で、発明・発明品を守ったり活用したりすることを説明した。
「弁理士のお助けポイント」として、(i)知的財産権をとる手伝い(特許権・実用新案権・意匠権・商標権の説明。特許権・商標権についてはクイズ)、
(ii)発明品を複数の権利で守る(カップヌードルの解体)、(iii)マネをやめさせたり、ニセモノで困る人を助ける(クイックルワイパーの模倣品対策紹介)、
(iv)発明品を世界で守る、の4つを説明した。
(ii)では、みんなで実際にカップヌードルの解体をし、中身を見てもらい、中に含まれている複数の発明、デザイン、商標を探してもらい、
その後実際に取得している権利を考えてもらった。カップヌードルの中身を初めて見る子ども達が多く、楽しそうに観察していた。
■参加者の感想(一部抜粋しての紹介)
「発明家と弁理士の関係が分かりました。発明家にとっては、弁理士がいないと、マネされて困るし、弁理士にとっては、発明家がいないと、仕事が成り立たないと思いました。
橋を作ったのは、思った以上にかわいく上手に作れてよかったです。」「今日はいろいろおしえてくれたから、ものすごく勉強になったし、ものすごくドキドキしたし、
ほんとうにものすごく楽しかったし今日は一日さいこうだった。」
「弁理士がとても貴重な仕事をしているのが分かった。発明家だけではなくそこからその商品を守るという仕事をしないと利益が・・・弁理士は重要です!」
「いっぱいおべんきょうをできました。とっきょやいろいろなことをしれた。はつめいかになるようにがんばる。」
「べんりしさんと発明家に会えて、ほんとに嬉しかった。ぼくも、発明家になってとっきょけんを取りたい!」他9件
■ご依頼者様のコメント(一部抜粋)
「とても充実したワークショップをありがとうございました。
お忙しい中、1日かけて子どもたちと学びを創ってくださり、本当に感謝しています。
子どもたち(参加した保護者の方)からも、発明家になるということだけではなく、権利や人を守るということについてたくさん学んできたようですとコメントいただいています。
マナビノキとしても、自分たちが取り組んでいる「探究型学習」をバックアップして頂くような講義内容で、昨日の内容を振り返ってみても、子どもたちにとって取り組みやすく、
わかりやすい内容だったととても満足しています。・・・午前中の発明家の講義内容が、ペーパーブリッジの工作にあらわれていたなと思います。
・・・カップラーメンの解体が印象的だったみたいで、翌日もその話をしていました。 事前打ち合わせを含め、一緒に授業づくりができたこと、とても楽しかったです。
・・・ぜひ、またご一緒できればと思います。本当にありがとうございました。」
■担当講師の感想
今回は、長時間のプログラムだったため、「講義(発明家)」➔「発明工作」➔「講義(弁理士)」という、普段とは違うスケジュールで行った。
講義では、事前打合せでマナビノキから要望を頂いた通り、できるだけ子ども達に問いかけ、子ども達の発言を上手く拾うように努め、子ども達が実際に手を動かせる時間を多くした。
子ども達は、明るく、学習意欲が非常に高く、また積極的に発言し、どの時間もみんな夢中になってわいわいと楽しんでくれているようだった。
我々の講義資料を基に、事前にマナビノキが作成して下さったワークシートが子ども達に配られていたのだが、
各自書き込むことで、要点が分かりやすく、後からも振り返りがしやすくなると感じた。
「発明工作」は、マナビノキの目標行動の一つである「協働」をできるように、「ペーパーブリッジ」に決めたが、
難しすぎず、簡単すぎず、全員が楽しんで工作に参加できるような絶妙なレベルで、よい選択だったと思い、先方からも同評価をいただいた。
発明だけでなくデザインもしてもらうことによって、小さい子たちも参加することができた。
最後に、お土産として水平ノートを配布したところ、子ども達は非常に喜んでくれて、私達は、ノートにサインを求められた。
「本物の発明家と弁理士からサインをもらった!大切にします!」と言ってもらい、嬉しく貴重な体験だった。
感想文では、授業で伝えたかったことを的確に理解してくれている感想が多く、ありがたかった。
今回、事前打合せも入念に行い、マナビノキと協力しながら授業を作り上げていくことができた結果、依頼者・子ども達・講師全員がより充実した時間を過ごせたと感じた。