【場所】東京都八王子市千人町4-8-1 東京都立八王子桑志高等学校
【対象】高校3年生(デザイン分野) 約70人
【講師】日本弁理士会関東会知財創造教育支援委員会 岩永勇二 (書記)
日本弁理士会関東会東京委員会 高原千鶴子
■授業の概要
先方からのご要望に沿って、下記スケジュール・内容で授業を行ないました。
(最初に出欠確認があったため、授業の開始は9:10頃から)
9:00–10:05 (岩永担当)
①「知的財産権の概要」、②「デザインと意匠権」 、③「発明と特許権」
知的財産権の概要(種類、知財ミックス、知財権の重要性)を説明後、デザイン分野の生徒であるため、意匠権について先に説明をしました。意匠権の保護事例(著作権や特許権との保護相関も含め)、登録要件、改正法に基づく保護対象の拡大事例の説明をしました。特許権については、主に、職務発明(意匠に準用)制度、保護事例および同様の発明をChatGPTにさせた場合の紹介を行ないました。最後に、デザインパテントコンテスト及びパテントコンテストについて入賞作品を中心に紹介しました。
10:10–11:15 (高原担当)
④「著作権(生成AIを含む)」、⑤「商標権」
生徒さんがデザイン分野であるため、今現在の授業や社会人となったときに必須の知識であるので、「著作権(生成AIを含む)」については、わかり易くを念頭に、1.著作権とは (著作者・著作権者、著作物、著作権の種類、著作者人格権等) 2.著作権侵害とは (著作権侵害の要件、著作権侵害に対する民事・刑事の制裁、権利侵害とならない使用) 3.生成AIについて 4.実際のトラブル事例 に分けて説明をしました。また、「商標権」については、著作物を創作して販売するときに他者と区別をするために必要な知識であるので、1.商標権とは(商標の種類、商標登録の要件、商標の使い方等)、2.商標の実際の例 3.実際のトラブル事例 4.商標権侵害による民事・刑事の制裁 について説明をしました。
11:15–11:40 質疑応答
質問が出なかったので、弁理士などの職業紹介の話を行ないました。終了間際になり、2名の生徒から質問がありました(恥ずかしかったのか、手を挙げて質問するのではなく、前に出てきて個人的に質問をしてきました)。
高原が受けた質問は、著作権の侵害について、侵害の訴えをする人としない人の違いについてでした。
岩永が受けた質問は、著作権に関する質問でした(中国でのアニメなどの模倣状況について)。
■生徒の感想 (一部)
・著作権については今まで何となく知っていたが、他の権利について初めて聞くことが多く、とても勉強になった。特許を取れるのは早いもの勝ちという話を聞いて、年月をかけて作った商品がもし情報がもれて、先に特許を取得されたりしたらどうするのだろうと思った。著作権の仕組みの話を聞いて、とても複雑で面白いと思った。SNSでも、よく無断転載などを見かけたり聞いたりするので、どこからが侵害にあたるのかを知れてよかった。この機会に少し権利について勉強してみたいと感じた。
・弁理士という職業は今日初めて知ったけど、開発段階でまだ世に出ていない商品やロゴなどのデザインを見ることができるということにとても魅力を感じた。1つの商品を開発してから販売するまでに10年近く、もしくはそれ以上かかることに驚いた。将来、何か、製品やサービスを創り出す職につく私たちデザイン科の生徒にとって著作権はもちろん商標権についても必ず関わることになるから、高校生、大学生のうちから少しでも知識を身につけておくことが重要だと思った。
・一つの製品にたくさんの権利がつくということに驚きました。ロゴや技術、形などのデザインそれぞれに権利があるという仕組みは製品を作る上で最初に考えた人を守ることが出来るのでとても良いなと思いました。また、シャープペンシルの発明をした人が日本人でシャープの人だったことにも驚きました。感情が入ったり個性のある作品だけにしか著作権がないことにも驚きました。チンパンジーとかゾウとかが描いた作品にも著作権があってもいいのになと思いました。
■主催者の感想
本校の専門学科デザイン分野の生徒たちのために授業内容をアレンジしていただきありがとうございました。
そのおかげで皆熱心に受講できた、充実した2時間半でした。プロの弁理士の先生の授業を分かり易く受講出来、大満足でした。また、おみやげでいただいた電子メモ帳も画面が大きく大変役に立っています。
本当にありがとうございました。感謝いたします。
■担当講師の感想
≪岩永≫
とてもまじめに静かに聴いてくれていました。感想文を見る限りでは、殆どの生徒に何らかの学びがあったようで安心しました。また、知的財産権や弁理士にも興味を持ってくれたようで、良かったです。
≪高原≫
最初にこの高校での知財授業は2回目であると説明したのが良かったのか、居眠りやあくびをする生徒さんはいなく、一生懸命話をきいてくれました。そして、授業が進むにつれてだんだんと内容に興味をもち始め、面白そうというような表情が浮かんできて、最後は楽しく授業ができました。3問の質問(iPhoneはどこの会社の商標でしょうか? PUMA対KUMA及びフランクミューラー対フランク三浦は有効か無効か)については、生徒さんを指して答えを求めたところ、もじもじしたりわからないという態度ではなく、明瞭にはっきりと即座に回答してくれましたので、内容についての理解はかなり身に付いたかと安心しました。