【会場】栃木県立足利工業高等学校
【対象】産業デザイン科2年生 計39名/産業デザイン科先生4名
栃木県発明協会1名/INPIT栃木県知財総合支援窓口1名(計45名)
【講師】知財創造教育支援委員会 弁理士 高原 千鶴子(文責)
栃木委員会 弁理士 山田 由美子
■授業の概要
足利工業高校は、全国の工業高校では4番目の歴史のある学校で、教育目標として
「人間性豊かな工業人の育成」を掲げ、「向学、愛隣、剛健、創造」を校訓とし、地
域産業を担う人材育成に取り組み、これまでに2万6千人を超える優秀な人材を輩出
しました。そして、令和4年には、愛知県で行われた「第1回 高校生ロボットシステ
ムインテグレーション競技会」において全国第1位を獲得し、また、特許庁・意匠登
録第1号の「雲井織」が所蔵されています。
授業は、前半部(高原)と後半部(山田先生)に分かれて行ないました。
前半部は、特許、意匠、商標等の知的財産権の説明、及び学校側からの要望で生成AI
(特にChatGPT)についても説明をしました。講義の最初に、生徒さんに知的財産権
に関する下記の課題(実際はもっと長いです)を出して生徒さんの反応を見ましたと
ころ、授業に熱心に取り組んでいただきこの試みは成功だったとおもいました。
課題:皆さんは、授業の宿題により、おもちゃの犬の貯金箱をデザインしました。
このおもちゃを他者に模倣されない為には、どんな知的財産権で保護したら良いか、
本日の講義を参考に考えてみて下さい。
ChatGPTについては、メリットとデメリットについて実際のChatGPTの展開を披露して
説明しました。また、画像の展開の面白さに生徒さんは驚きの声をあげていました
が、最後にChatGPTを利用する上で、生徒さんに著作権侵害とならないように、守ら
なければいけない注意点について述べ、先生には、生徒さんが、AIを使うべき場面か
どうか、適切に判断できるように指導して頂きたいとお願いを致しました。
後半部は、特許調査について実習を行いました。実習の前に、まず、特許調査が何
故必要かについて、また、著作権と異なって意匠権などの産業財産権は登録によって
権利が発生するものであるため、データベースがあることについて、説明しました。
J-platpatを利用した産業財産権の調査では、一人1つずつ端末を使って実習しまし
た。課題は、“峭罎任琉嫋◆⊂ι検特許の検索意匠の物品名での検索商標の称
呼での検索ぞι犬凌涎舛任慮〆です。生徒さんは、最初は先生方の助けも借りてい
ましたが、すぐに要領を掴んでいました。生徒さんは前月に企業見学で、商品のパッ
ケージの開発などについて話を聞いてきているということでしたが、今回の授業で
「包装」について検索したことも合わせて、商品開発について立体的に捉えていける
助けになっていれば嬉しく思います
■生徒さんのコメント (感想文からの抜粋)
・貴重な時間をありがとうございました。これから私たちが生活するうえでスマホは
欠かせなく、その中で著作権が関
わってくるので、今回の授業で将来デザインの仕事をするときに活かせたら良いなと
思います。それから、知財調査
では、商品展開や研究開発を調べました。J-Plat-Pat で登録番号を入力して商品を
調べたり、ケーキを調べたりも
しました。たくさんの機能があり、検索、閲覧、ダウンロード、プリントアウトなど
できることを知りました。
・今回の知的財産権の講話を聞いて将来役に立つさまざまな知識を得ることができま
した。意匠権や商標権など名前は
知っていたけれど、どんな権利なのかはよくわかっていませんでした。なので知るこ
とができてとても勉強になりま
した。大人になるまで今日学んだことを忘れずにしていきたいです。とてもおもしろ
かったです。
・今回の知的財産の授業を通して、意匠権や商標権など、商品を作ったり、発明した
りするうえで必要となってくるも
のがたくさんあることがわかりました。また、自分たちが画像などを調べて使う際に
も、侵害に当たらないか、ほん
とに大丈夫なのかを考えて使用することが大切だと分かりました。貴重なお時間をあ
りがとうございました。今後に
活かしていきます。
・今回の講習を受けて著作権や知的財産権の大切さについて学べました。著作権の登
録や独占権など私の知らないこと
がたくさんありました。知的財産の創造には費用・時間がかかるので、他人が無断で
無制限に利用できないように法
的保護をすることなど分かりました。将来、絵に関する仕事に就きたいので活かした
いです。
・元々少しネットニュースなどで知的財産権、著作権などについて知っていました
が、今回で更に深く知ることができ
てよかったです。その他にも、意匠権や商標登録についての知識など知らなかったこ
とも知れました。例や画像を使
った解説がわかりやすかったです。今回で得た知識を忘れず、権利を侵されないよう
にしていきたいと思いました。
・この度は、出張授業ありがとうございました。産業デザイン科なので、比較的、ロ
ゴやアイディアを考えることが多
いので色んな権を気にしなくてはいけないので今日くわしく聞けて良かったです。パ
ソコンで、どんなものがあるか
体験しながら調べることができて楽しかったです。色んな権に気を付けながら、アイ
ディアなどで考えていきたいな
と思いました。ありがとうございました。
・この度は、知的財産権についての授業をありがとうございました。私は今まで「創
作したものを保護するための色々
な権利がある。」ということしか知りませんでした。でも、今回の授業を通して、意
匠権、商標権、特許権について
詳しく学ぶことができました。ふだん、自分で考えて絵を描いたり、デザインを考え
たりといった作業をしているの
で、この機会で勉強ができてよかったです。また、後半にやった実習では、実際にど
んなものが登録されているのか
がわかって、自分で調べることができて楽しかったです。今回教えてもらったこと
を、今後活かせるようにしたいと
思いました。
■ご依頼者様のコメント
・知的財産権について、種類や実例、生成AIとの向き合い方など、学校では指導方
法に悩むところをお聞きできて
大変勉強になりました。将来デザインやものつくりの現場で働く生徒に、「どうした
ら権利を守れるのか、何をした
ら権利を侵害してしまうのか」を考えるきっかけとなるよう、指導する側として理解
を深めていきたいです。
・教育活動に関連する事例や事前質問への丁寧な解答から、実践的な内容を学ぶこと
ができました。また、その場で
質問に解答いただけたことで、より具体的な確認を行える貴重な機会となりました。
生徒の成果物を公共の場で
展示するためにも、今までの課題の見直しが必要に感じました。
・今回は近年社会問題になりつつある「AI による画像生成」の注意すべき事例を紹
介していただき、非常に学びの
ある時間を過ごさせていただきました。また、授業の進めていく上で注意すべき画像
や配布物の利用や行事等で
使用する T シャツのデザインへの注意を指導していただき、今後の教育活動への参
考になりました。
・ものづくりや生徒作品展覧会において、著作権侵害のないよう、より一層気を付け
ていかねばならないと感じま
した。特に本校では外部での作品展示・販売が多くあるため、展示・販売において権
利侵害にあたる行為が確認
でき、大変役立ちました。またデザインを携わる教員として、生徒たちに知識を広げ
ていきたいと思いました。
■担当講師の感想
産業デザイン科は、女生徒が大部分を占めている科で、絵画を描いたり、デザインを
したり、卓上機織り機を使って反物を織ったりする授業で、工業高校というより、美
術学校の様な明るい雰囲気の学校でした。興味を持って講師の話に耳を傾けてくれた
ので講師冥利に尽きました。
学外の講師の授業の開催に積極的な学校で、生徒さんもそれを良い経験にしているこ
とが感じられます。訪問する度に思いますが、学校全体の雰囲気もとてもよいです。
弁理士会関東会として末永くお役に立てるようにしていきたいです。