【日時】2024/12/19 (木)  10:45〜12:25

【場所】東京都八王子市千人町4-8-1 東京都立八王子桑志高等学校 【対象】デザイン科・2年生及び3年生 計 約140人

【講師】日本弁理士会関東会知財創造教育支援委員会   高井 智之 弁理士 

日本弁理士会関東会東京委員会   高原千鶴子 弁理士 (書記)

1.概要

 昨年行ったキャリア教育の代わりに、生徒が興味を示す、デザイン関係の紛争事例を含む内容をお願いしますとの先方からのご要望に沿って、下記スケジュール・内容で授業を行ないました。

10:55–11:30 (高原弁理士) 意匠・デザインの基礎知識と事例問題

最初に、意匠・商標・著作権の基礎知識を概略で述べ、次に、デザイン科の生徒さんなので特に意匠についての情報(意匠権に期待される効果、高額な意匠の損害賠償額の例)を説明しました。最後に、ハイライトとして、色々な紛争事例を解説し、難しい箇所については、直ちに理解するのは難しくても、このような紛争場面であっても、阻止する対策はあるということを覚えていてくれるだけで十分ですと述べました。 

① 意匠の基礎知識 ②商標の基礎知識 ③著作権の基礎知識 ④意匠権に期待される効果 ⑤高額な意

匠の損害賠償額の例 ⑥事例問題(1. SNSでの無断使用について、 2. インターネット上のイラストの使用、3.外国からの模倣品の輸入について、4.Tシャツのイラスト胸元図案、5.他人の登録商標をTシャツに印刷した場合に商標権侵害となるか、6.長靴事件、7. ミッフィー と キャシー 事件) の説明をしました。

    

10:10–11:15 (高井弁理士) 特許の基礎知識と事例

 最初に、知的財産権と、その専門家である弁理士について概要を説明し、特許をめぐる近年の事例(アップルVSサムスン事件、切餅事件、「いきなりステーキ」のビジネスモデル特許の事例、ソフトビニール人形に係る特許を取得した結果、SNSにおいて炎上した事例等)を挙げ、世界各国で特許訴訟が行われ、事件が国際化する可能性や、損害賠償額が高額になる可能性、身近な製品であっても特許をめぐる紛争になり得ることや、上記ソフトビニール人形の特許や近似した商標の事例(ゆっくり茶番劇事件)を挙げ知財権の取得が思わぬ形で炎上につながる可能性があることを説明しました。

 つぎに、特許の基礎知識(特許法上の発明、特許要件)を説明したうえで、一見簡単なアイデアでも特許になった事例や、無審査登録が特徴の実用新案や、1つの製品を特許、実用新案、意匠、商標で多面的に保護する「知財ミックス」の事例について説明しました。

 最後に、日本における特許出願やPCT出願等の出願件数のデータを参照しつつ、日本の特許出願、PCT出願件数が高い水準にあるだけでなく、中小企業による特許出願、PCT出願が増加傾向にあり、中小企業における知財の重要性の認識が高まっていることを説明しました。

11:15–11:40 質疑応答

 授業で持ち運びできるあるものを作りました。これは、どの権利で保護すべきでしょうか?

回答として、知的財産としては、特許、実用新案、意匠、商標、著作権での保護が考えられます。しかし、どの分野の人を対象とするか、また、費用をどの位掛けられるかにより、登録する権利の範囲は変わってくると思います。例えば、大企業ならば、全ての権利の出願(登録)の保護が可能ですが、中小企業ならば、お金がかかる特許の出願は避けて、意匠と商標のみでの出願が考えられ場合があります

2.生徒の感想 

 ・(2年生)デザイン科なので著作権や商標の話はよく聞きますが、しっかりと理解できていなかったので、ちゃんと詳しく知ることができて良かったと思います。意匠権の中には、ペットボトルの模様や建物の外観、内装も入っていることに驚きました。フランクミュラーとフランク三浦の事件で非類似として商標権に登録されたこともあり、とても難しい問題だと感じました。著作権については、「思想又は感情を創作的に表現したもの」であり、動物が描いた絵や彫刻などの作品は著作権に入らないことを初めて知りました。

 ・(3年生) 知的財産権という言葉は聞いたことがありましたが、どのような種類があり、それぞれ何を保護対象とするのかといったことは全く知らなかったため、今回の実際にあった商標の有効や著作権侵害に関する提訴の例は意匠権や商標権がどういった審査を通じて取得できるのか、また、盗用や模倣となる線引きについても自分がいかに曖昧な認識であったかということを感じ、これから大学へ進学し、デザインについて深く学んでいき、もしさらにその先の将来、新たな製品等を創作するとなったとき、自らが生み出したものが、知らず知らずのうちに誰かにより、それが持つ権利が侵されないように、また、自分自身も他者が創造したものを侵害しないため知的財産法についてより理解を深めていきたいと思います。

・(2年生)「身近な例を挙げて分かりやすく特許について教えてくださり、とてもためになる講演会でした。私が日々使っている製品のほぼ全てが特許権で守られていることが分かり、人のひらめきにも感謝して生きていこうという気持ちになりました。私たちが、もし特許を取得する場合、ちゃんと考えて取りたいです。」

・(2年生)「自分が考えた技術を特許にすることで、技術を安心して使うことができ、特許によるライバルの参入を防ぐことができるという利点を知ることができました。特許による自分のビジネスのPRになることも知ることができました。特許を取得した商品が他社に模倣される事例もありましたが、それ以上に特許を取得するメリットがあると思いました。」

・(3年生)「多くの事例を挙げて説明してくださり、とても分かりやすかったです。特許権、実用新案権を取得することのメリットを挙げることで、私たち制作者に寄り添っていると感じました。この基礎知識を生かし、これからの創作活動に励んでいきたいです。」

・(3年生)「特許について噛み砕かれて説明されていて、とても分かりやすかったです。また、特許を取得するための条件も事例とともに説明され、特許の重要性についてもスライドの中にまとめられていて、とても理解が深まりました。」

3.ご依頼者様の感想

 普段より造形活動における知識、技術の取得は行っているのですが、作ったものに関する権利や登録の方法などについて学習する機会はありません。教員にしても専門性が違うこともあります。プロフェッショナルの方から直接ご講義頂くことは、生徒たちの今後にとってとても有意義でありました。また、教員としても発見が多く、今後の生徒への始動に活かせる力を学ばせていただきました。

 次年度もぜひとも講演会をお願いしたいと思っております。引き続きご助力、ご指導いただけると幸いです。

4.担当講師の感想・注意点など

≪高原弁理士≫

あるデザイナーがデザインした2020年東京オリンピック第1回目の公式エンブレムが発表されて程なく、ベルギーのリエージュ劇場のロゴマークに酷似しているとの盗作疑惑が持ち上がり、これを契機として日本中が大論争となり、最終的に五輪組織委員会が採用の撤回を発表し、改めて第2回目の公式エンブレムが決定されました。

この事件を発端に、著作権への興味を国民の皆様が持つようになり著作権は身近な権利となりました。その影響は、著作権のみならず知的財産権に広がりましたが、それは言葉のみで本当はまだよはく知らないのが実情と感じておりましたので、まず意匠・商標・著作権の基礎知識を概略で述べ、その後に具体例を挙げて理解して頂けるように務めました。 

生徒さんや先生、居眠りや私語をすることなく熱心に聞いて下さったので、大変説明がし易く講師冥利に尽きる学校でした。

≪高井弁理士≫

普段、デザインを学ぶ生徒にとって特許は、意匠や著作権に比べて、馴染みが無いであろうことが想定されたため、特許になった事例や、特許、意匠、商標による多面的な保護の事例等、できるだけ具体例を、特許図面等を参照しつつ理解しやすいように解説することを意識しました。その結果、上記「3.生徒の感想」にあるように、身近な例を挙げた分かりやすい授業だった旨のご感想を多く頂くことができました。

一方、授業に用いたスライドは、やや情報量が多くなってしまい、各スライドの解説に掛ける時間が短くなってしまった印象があり、各スライドを、もう少しシンプルにすれば、解説の時間をもう少し確保することができたと感じました。しかしながら、生徒の感想からは、具体的な事例の感想や、特許要件等の特許法への理解を垣間見ることができ、特許制度や、特許とデザインとの関わりについて、ご理解を頂いたものと考えております。

Related posts